私はこれまで約3年、学習塾で子どもたちに勉強を教えていました。年齢は2歳~高校生と様々です。その中でも一番教えるのが難しかったのが幼児でした。気づいたら席に座っていない、先生が話をしている途中で騒ぎ出す、トイレ行き放題などなど・・・そんな経験から「これって日本語教師になったときにも役立つ経験だったかも」と思い、書いてみることにしました。
幼児教育と日本語教育の共通点って?
日本人の子どもたちを教えるのと、外国人生徒を教えるのって共通することなんてある?
と疑問を持たれた方もいるかもしれません。
しかし、意外に共通する点があるんです。
- 言葉が通じない
- 社会のルール(文化)を知らない
- これらによって教師の「当たり前」が通じない
大人同士の会話やコミュニケーションだと「何となく伝わってるよねー」とお互いが相手の意見やその場の空気を読み取って物事が進むケースもよくあります。しかし、それが出来ないのが幼児教育と日本語教育。さらにルールや文化の知識が十分にないことで、授業を円滑に進めるためにもいくつか工夫が必要です。
授業で使えるチェックポイント
実際に教える立場になったとき「これだけは気をつけたい」と思っているポイントを3つ紹介します。
1.話すときは「使う言葉のレベル」を合わせる
言葉を教える「日本語教育」で言葉のレベルを合わせるなんて、当たり前のことと思いますよね?そもそも知らない言葉で説明してしまうと、授業自体が成り立たないと思います。
そこで今回気をつけたいポイントは、とっさに出る「注意」「指示」の言葉です。
授業内容では気をつけている語彙レベルですが、ふいに出る言葉は意外と意識していないことが多いです。参考までに私がよく失敗した言葉を書いてみました。
- 起立 ⇒ 「立って下さい」
- 準備 ⇒ 「勉強の前にすること」
- 順番 ⇒ 「一番は誰かな?」
特に高校生を教えてからすぐ、3才児を教えるときに言葉のレベルを合わせようと混乱した経験があります。いつもは日本人と話し、授業の間だけ簡単な日本語を話している日本語教師の皆さんも、同じように感じる部分もあるのかなと思います。
また一方で、この失敗は「気付き」になるいいチャンスでもありますよね。先生にとっては「この言葉は簡単そうだけど意外にわからないんだな」という気づき、学生にとっては「難しいけど、こんな日本語もあるんだな」という気付きになります。
なので「言葉のレベル」は程よく気にしておくポイント、という感じになりそうですね。
2.「休憩時間」をこまめに取る
子どもは集中力がないかもしれないけど、日本語を学ぶ学生や大人に関係ある?と思うかもしれません。
しかし授業している側は「既に知っている日本語」を話しているのであまり気になりませんが、先生が話している言葉すべてがわからない日本語学習者にとっては「わからない日本語を聞いている時間」はとても脳を使っています。
そのため「多すぎるかな?」くらいの頻度でこまめに休憩を取り入れることが大切です。
ただし、休憩の取りすぎにも注意したいですよね。もし生徒が授業と休憩の切り替えが難しい年齢なら「授業から少し離れる」くらいの時間にしてもいいかもしれません。例えば教科書やノートを閉じて、隣の人とこれまでの学習についての感想を言い合う時間にする。自分なりにノートにまとめる時間にする、次の授業の目標を決めるなど。
先生と生徒の雑談の時間にすることで、コミュニケーションを図るのも良いですね。
3.相手に伝わる「言葉以外のポイント」を押さえておく
「言葉が伝わらないからこそ、それ以外から相手の情報を読み取ろうとする」のが人間の自然なコミュニケーション方法です。では「言葉以外の情報」とはどんなものか、具体的に見てみます。
- 視覚情報(見た目・表情・動き)
- 聴覚情報(声のトーンや大きさ、早さ)
- 距離感(精神的・物理的な距離)
優しい言葉を使っても、相手は怖いなと思うことがあります。また、丁寧に対応してるつもりでも心のどこかで「こんなこともわからないの??」と思っていると「先生はあまり自分の話を聞きたくないんだ」と感じて質問をしなくなってしまうこともあります。
そして「適度な距離感」も大切ですよね。これは幼児教育で言うと「依存・支配」につながらないかという観点でもありますし、日本語教育で言えば「文化の違い」から生まれるものもあります。初めて海外に行った時、私は外国人の近すぎる距離にびっくりしました。そんな違いも意識することが良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
誰に教える場合でも一番は「相手を見ること」が大切な気がします。
今回いくつかポイントを挙げてみましたが、普段の授業でも「なんか生徒の様子が違うな」と感じたときに自身で気付くことで、新しいポイントを見つけることもありますよね。
授業をしながら私自身も生徒とともに成長していけると良いな、と思っています。