日本語教師に必要なスキルシリーズ、今回は「表現力」です。
日本の2020年教育改革でも重要視されている「思考力・表現力・判断力」。特に、控えめだと言われる日本人は、海外の生徒に教えるときに教師の表現力が問われる気がしています。
そこで今回は、日本語教師に必要となってくる表現力について考えてみました。
「表現力」とは?
定義
「表現力」を辞書で調べてみると、心に思うこと、感ずることを、色・音・言語・所作などの形によって、表し出す力とありました。
個人的には「うまく説明できる」というのが表現力のある教師かな?と思っていたのですが、視覚や聴覚へのアプローチも表現力の一つと言えることがわかりました。
「表現力」の具体例
では、表現力の具体例を見てみましょう。以下は、ある日本語学校の教師と生徒との会話です。
生徒
教師A
教師B
教師C
このように比較するとわかりやすく、最も表現力があるのは教師Cですよね。
教師Aは、自分の家や食べ物、暮らしに関する感情があまりありません。表現力で大切になってくるのが自分の感情や思いです。そもそも何も感じていないことについて、表現力を磨くのは難しいでしょう。
教師Bは、生徒の質問に対して正しい日本語で丁寧に答えています。ただし、表現力としてはもう少し工夫ができそうですよね。質問してくれた生徒に対して、「どう伝えればイメージが湧きやすいか」「自分の感情・思いは入っているか」と考えてみると良いかもしれません。
その点、教師Cの答えは日本で暮らす先生のイメージが湧きやすいですよね。
色や大きさを伝えることで、生徒も頭の中で日本の暮らしを想像できます。
日本語教師における「表現力」
日本語教師の「表現力」が必要な場面
では、日本語教師はどのような場面で表現力が必要になるでしょうか。
- 自己紹介
- 授業でのシーン説明
- 生徒をほめるとき
日本語教師は、様々な場面で表現力が必要になってきます。
生徒に初めて会ったときの自己紹介では、生徒も日本人の先生にとても興味があるはず。暮らしや海外との違いについて、基本的な情報だけでなく自分の気持ちを伝えられる準備をしておきましょう。
また、授業で日本語を教えるときにも色んな場面で使う日本語を扱いますよね。
日本語には感情を表す単語も多く、微妙なニュアンスの違いを伝えるときに教師の表現力が試されます。
最後は意外なポイント「生徒をほめるとき」です。
「いいね」「すごい」「ばっちり」などの言葉より、「頑張っている姿が先生も嬉しかった」といった感情を含めた称賛は、より生徒のモチベーションを高めます。
「表現力」を育てるポイント
日本語教師の「表現力」は、この3つを意識してみることをおすすめします。
- 自分の表現力レベルを知る
- 相手の優位感覚を知る
- 周囲の人との会話を増やす
それぞれ順に見ていきましょう。
1.自分の表現力レベルを知る
まずは、自分の表現力レベルを知ることが大切です。
教師にとって一番危険なのは「伝えているつもり」になってしまうこと。特に、教師歴が長くなってくると「前の生徒は、この授業でわかってくれたのに・・・」など、理解できないのは生徒のせいにしてしまうこともあるんですよね。
時折、「自分の伝え方は生徒にとってわかりやすいか」と、自分の表現力の見直しをする必要があります。
2.相手の優位感覚を知る
実は、自分の表現力を磨く以外にも生徒に効果的な方法があります。
そもそも、教師が表現力を高める目的は「何かを生徒にわかりやすく伝えるため」ですよね。
そこで、生徒が受け取りやすい形で表現するという方法があるんです。
専門的な解説はここで詳しく述べませんが、人には「視覚」「聴覚」「身体感覚」の中で、受け取りやすい感覚が決まっています。
生徒それぞれの感覚に合わせ、「図解する」「話して伝える」「一緒にやってみる」などの工夫ができますよ。
3.周囲の人との会話を増やす
最後は、たくさんの人と話すことです。
「話すだけで良いの?」と思われがちですが、会話で以下のような気づきを得ることができますよ。
- 自分の価値観を知る
- 他の人の視点を知る
- 伝わりやすい表現を身につける
他の人の意見や感情を知らないと、自分の気持ちにも気づきづらいですし、新しい発想も生まれにくくなります。
また、会話の中で自然と表現するトレーニングができるので、意識して人との会話を増やしてみてはいかがでしょうか。