前回の「傾聴力」に続き、今回は「質問力」について考えてみたいと思います。
授業内での質問は、単に問題の答えを聞くだけではありません。生徒が回答を導き出すまでの過程をしっかり意識して質問を作ることが求められてきます。
「質問力」とは?
定義
まず、質問とは「わからないところや疑わしい点について問いただすこと。また、その内容」を指します。この質問を作る力を「質問力」としています。
そして一括りに「質問」と言っても、質問をするシチュエーションや相手との関係性によって様々です。
「質問」の種類
質問には様々な分類方法や種類があります。今回は3つだけご紹介します。
- 5W1H(What/Who/When/Why/Where/How)
「誰が」「いつ」「どこで」など、具体的な内容に関する質問 - オープンクエッション
「どう思った?」「何ができるだろう?」のような答えはひとつではない質問
- クローズドクエッション
はい/いいえやAかBかなどで答えることのできる答えを限定した質問
「5W1H」の質問では、出来事や課題などを明確にすることができます。例えば「昨日何をしたの?」という質問のあとに「時間や場所、理由」など深掘りしていくことによって、詳しく内容を知ることが出来ます。また、日本語学習で用いる場合は、様々なジャンルの語彙を増やすことが出来ますね。
残り2つの質問はは使い方や対象者との関係が重要になります。
次の章で具体例を見てみましょう。
日本語教師における「質問力」
「質問力」が必要な具体例
では、様々な質問を使ったトークを例に挙げてみます。
生徒
質問①
質問②
質問③
質問④
質問⑤
①②④はクローズド・クエスチョンと呼ばれ、③⑤はオープン・クエスチョンと呼ばれる質問ですね。
どちらの質問が良い・悪いということはありませんが、使い方を意識すると生徒の受ける印象が変わってきます。
「難しかったの?何時間かかったの?勉強は楽しいの??」と、いきなり先生からクローズド・クエスチョンの質問攻めになってしまうと、生徒は「はい」「いいえ」など短い回答しかできません。また、生徒によっては威圧的に感じる生徒もいます。
その一方で、授業や教室の雰囲気に馴染めていない生徒などに⑤のようなオープンな質問をしても、答えるまでに時間がかかったり、日本語ではうまく答えられない可能性もあります。そんなときはクローズド・クエスチョンを使い、簡単なコミュニケーションから始めるのが良いでしょう。
「質問力」が生徒に与える効果
では「質問力」を身につけることは、生徒にどのような良い影響があるのでしょうか。
- 日本語能力だけでなく「考える力」が育つ
- 授業内容が定着しやすくなる
- 授業内で良好なコミュケーションを取ることができる
いくつか効果を挙げましたが、「質問」の最大の効果は「自ら考える力・定着」です。人は他者から投げ掛けられた質問を通して、自分で考えることができます。例えば、今まで何も考えずに復習をしていた生徒が「宿題の中で一番時間がかかった問題はどれ?」と質問されたとします。そのとき生徒は初めて「一番時間がかかった問題」について考え始めます。
自分で考えることによって苦手分野がわかったり、どうして時間がかかったのかを考える生徒もいます。そして自分で考えてみる過程は、人に教えられるより頭に残りやすいんですよね。
授業を受けた後、内容はあまり覚えていなくても「自分が当てられた問題」だけ何となく記憶に残っていることはありませんか?それはこの「自分で考える」から生まれた定着なんです。
まとめ
皆さんは自分に「質問力」があると思いますか?何だか難しそう、と思われている方も心配ありません。
質問力を鍛えるコツは「相手に興味を持つこと」だそうです。これを見たとき、確かにうなずけました。教師として生徒を見ていると、いつもと何か違うなと感じることがあります。元気がなかったり、反対にとてもやる気がある日があったり。そんな些細な変化に気づけると自然に質問も出てきます。
「今日は元気が良さそうだね。何か良いことあった?」など学習の定着以外にも、そんな簡単な問いかけが良好なコミュニケーションをつくります。是非あまり深く考えすぎずに、気軽に質問力を磨いてみて下さいね。