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技能実習生(介護)の現状と日本語教師にできること

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技能実習生(介護)の現状と日本語教師にできること

日本では、2017年から介護分野での技能実習生の受け入れが始まりました。

しかし、介護業界の人員不足を解消すべく外国人を雇っても、実習生にとっては課題も多いのが現状です。例えば、日本語能力の要件が厳しいにも関わらず低賃金で、日本語学習に充てる費用を捻出出来ないという悪循環がありました。

そこで、技能実習生を取り巻く現状や、私たち日本語教師を目指す人たちができることについてまとめてみました。

技能実習生の現状とは?

様々な分野で雇用が進む技能実習生。今回は、介護分野を中心に調べてみました。

「どんな国からの実習生が多いの?」
「介護職ならではの課題は?」

賃金や必要な日本語レベルについても調べてみましたよ。

実習生の出身国

技能実習生全体としては、以下の国から日本を訪れる人々が増えていました。

技能実習生の国籍(平成29年末)

続いて、インドネシア・タイからの受け入れが多いようですね。

実習生の賃金

介護分野は特に、日本人にとっても「低賃金で重労働」というイメージが強い分野。
そのため、現場では人手不足になっているのが現状です。

また、雇用する側にとっては「日本人を雇うのは難しいけれど、最低賃金でも働いてくれる外国人労働者は魅力的」といった発想も現実的にあるようですね。

最低賃金となると、最も高い東京でも985円。最低額は鹿児島県の時給761円でした。(厚生労働省:平成30年度地域別最低賃金改定状況調べ)

外国人労働者にとっては、母国の給料と比べると高額かもしれませんが、日本で暮らすとなると大変。
この賃金で日本語を学ぶための費用を捻出するのはかなり難しいでしょう。

必要な日本語レベル

私たちが海外旅行でカタコトの英語で必死に会話するのと同じように、外国人にとっても日本で暮らすのは大変なこと。
特に、介護職はコミュニケーションが重要な職場環境ですしね。

そのため「日本語能力要件」についても、その他の技能実習生の日本語要件に加え、以下の要件があります。

  • 第1号技能実習(1年目):
    日本語能力試験のN4に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。
  • 第2号技能実習(2年目):
    日本語能力試験のN3に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。

日常会話のレベルに加えて、介護に関する専門用語の難しさも実習生にとっては大きな課題です。病名や器具名、目上の人と話す際の敬語表現など、日本人でも難しい表現もありますよね。

日本語教師にできること

今後増えていくと予想される技能実習生のために、私たち日本語教師を目指す者ができることを考えてみました。

技能実習生の課題

日本の受け入れ条件をクリアした優秀な人材でも、実際に介護の現場に入ってから多くの課題に直面しています。

「賃金が低い」「語学に不安がある」「文化に馴染めない」
労働条件に不安を抱えていたある留学生は、日本語学校に相談するも退学を言い渡されてしまったというケースもあるようです。

未払い賃金や長時間労働について、女性が介護施設側に抗議していたところ、2019年1月28日、日本語学校から、退学を言い渡されたうえ、帰国を強制させられそうになったという。
女性は身の危険を感じて、その夜に寮から逃げ出すことになった。
弁護士ドットコムニュース より)

受け入れ先の体制が十分でなく不安があっても、「誰かに相談してしまうと母国に帰らなくてはいけなくなるかもしれない」と思い、誰にも悩みを相談できない実習生も少なくないのかもしれませんね。

ある日本語教室の取り組み

日本語に不安があっても、日本語学習にかける費用がない実習生たち。
そんな実習生を支える取り組みが、名古屋市のボランティア日本語教室で行われていました。

技能実習生は仕事に追われ、経済的な余裕がない中でも、土曜日や就業後、自らの意志でボランティア日本語教室に来て、日本語を学習する。
(中略)このNPO法人が運営するボランティア日本語教室では、日本語教育の専門的な知識や教授スキルを持った日本語教師が、”無償のボランティア”として教室を支えているのだ。
「草の根で実習生を支える」より)

こちらの記事では「無償のボランティアは美談ではない」と述べられていますが、日本語教師を目指す私たちにとってはボランティアも一つの経験の場になるという捉え方も出来るのではないか?と感じました。

私たちにできること

正直なところ、日本語教師も低賃金に悩んでいるのが現状です。外国人労働者が増えるとはいえ、まだまだ日本語教師を取り巻く環境は整備されてるとは言えません。

しかし、日本語教師デビューする前にボランティアとして「働く」のではなく「経験を積む」と考えてみてはいかがでしょうか。
養成スクールでの実習の講座は、私たちがお金を支払って教壇に立たせて頂くもの。

だったら、無料で教壇に立って経験を積めるというのは貴重な機会とも言えるはず。

日本語教師の卵にとっては、技能実習生への授業を行うことは無償の実践の場。技能実習生にとっては、気軽に日本語力をアップできる場になるかもしれません。

国の制度や基準を自分たちで変えるのは難しくても、自分にできることはたくさんある!
そんなふうに考えてみるのも良いのかなと感じています。